お早うございます。早起きディレクターです。
蒸し暑い日が続きますが皆様お元気でお過ごしですか。
きょうはそんなうっとうしい日々が少しだけ爽やかになるような楽しくて笑える映画の話題です。
そう、それがタイトルにも書いた実写版「サザエさん」
この映画は1956年(昭和31年)公開といいますから今から70年近く前に作られた作品ですが、これが今見ても十分笑える。
もちろん令和の今見れば道徳や言葉つかいなど多少は古い部分はありますが、そんな些細なことを払拭するほどの魅力と迫力に満ち溢れているのが稀代のエンターティナー江利チエミさんの存在感です。
何度でも言う!江利チエミさんはすごい歌手、役者、コメディアンだった!
わたしも最初は「実写版・・・」ということで、どうせ当時人気だった江利チエミをお飾りに使った”生ぬるーいコメディー映画”でしょう、と多少ななめ目線で拝見しましたがとんでもございません!
いやあ、びっくりしました。
感心もしました。
そして笑わせてもらいました。
江利さん、そして映画のスタッフ一同様ごめんなさい。
実写版というからあのアニメ「サザエさん」の後発企画かと思えばそれはまったく逆で、こちらの江利チエミさん演じる溌剌たるサザエさんのキャラを引き継いで、後の1968年に改めてアニメ版「サザエさん」が誕生したそうです。
映画の軸をなすのがもちろん江利チエミさん演じるあわてものでそそっかしいサザエさん。
彼女が時に妄想しながら歌って踊って画面いっぱい暴れまわります。
そして脇を固める藤原鎌足さんと清川虹子さんが演じる波平とフネのおとぼけで味わいのある演技もまた見事。
カツオとワカメの配役、演技も達者なもんで(カツオは長髪で松島みどりがワカメ役!!)マスオさんを演じる小泉博さんの好感度も新鮮でした。
小泉さんはいわゆる昭和風のイケメンですが、どこか育ちが良くて垢抜けてもいて、もしかしたら現代に登場しても若い子に受けそうな好男子ぶりです。
でも、何度も言いますが、なんといっても江利チエミさんのチャーミングで腹の座った演技、そして民謡からジャズ、クラシックなんでもこい!の歌唱力の高さが映画の中心です。
あと、所々でコーラスを放り込むダークダックスを始めとするミュージシャンの使い方も見事。
ついでに個人的にかなり嬉しいのが、そのストーリ(全部で10作のシリーズものですが)の合間に出てくる伝説の俳優やお笑い芸人の充実ぶりです。
中でも東西の伝説コメディアンたちのやりとりは懐かしさを通り越して、あの昭和の郷愁さえ漂わせます。
あの頃のコメディアンが大集合
ざっと列挙すると、レギュラー格で登場するサザエさんの親戚(?)を演じる花菱アチャコさんを筆頭に「オロナイン軟膏」の浪花千栄子さん、そして芦屋雁之助さん。
さらに「番頭版と丁稚どん」で大人気だった大村崑さんに茶川一郎さん芦屋小雁さんの三人衆の笑いは今でも大爆笑。さらにダイマル・ラケットのおふたりが登場する回もありました。
これらの人々は当時、江利チエミさんは吉本興業所属ですからその政治的やりとりということもあるのでしょうが、それにしても演芸ファンには嬉しい面々です。
同様に東のコメディアンも豪華絢爛で、サザエさんの仲人役の柳家金語楼さんをはじめ、物語の随所に三木のり平さんに益田キートン先生、由利徹さんに八波むと志さん、そして名古屋からは「ハヤシもあるでよ」の南利明さんという懐かしくて錚々たるメンバーが登場します。
驚いたのは由利さんにしろ林さんにしろコメディアンながらみんなハンサムで色気があること。
彼らが当時のキレッキレの笑いをスクリーンの中で演じてくれるこの作品群は日本コメディー史上の資料としても貴重な映画ではないでしょうか。
しかし、しかし、何度でもいいますがやっぱりイチオシなのが江利チエミさん。
芸能界の荒波に揉まれた悲運の才女、江利チエミさん
江利チエミさんは昭和27年に「テネシーワルツ」の大ヒットで人気歌手になり、しかも美空ひばりさん雪村いずみさん(映画にも登場)とともに「三人娘」としても当時大活躍でしたから、映画が上映された1956年から1961年といえば、レコードから舞台、映画までむちゃくちゃ大忙しで寝る暇もなかったはずです。
それなのに一切の手抜きや妥協を感じさせないあの圧倒的演技、歌唱には頭が下がります。
なにより、大人の男として今回あらためて動画で江利さんを見たのですが、彼女ってかなりキュート(美人ではないかもしれないが)で、ほどよく色気もあって、かなり男性受けしそうなタイプと見えました。
あの高倉健さんもそんなところに夢中になったんでしょうか?
・・・・
しかし、そんな芸能の女神様から選ばれた大スター江利チエミさんも、晩年は芸能界からはどこか忘れられた存在になっていたのも事実です。
1982年。
彼女が42歳の時、脳卒中と飲酒が原因で自室で倒れている、というニュースはかなり衝撃で全国の善男善女が衝撃を受けました。
しかし、そこには忘れ去られた大スターの悲劇の末路という芸能ニュースが好きそうな悪意ある思惑かなりまじっていたことを当時大学生だった私も覚えています。
そう、彼女はある種、時代という魔物の犠牲になった一人かもしれません。
歌でも演技でも美空ひばりさんと比べてさえ決して引けを取らない江利チエミさん。
それどころか彼女こそ今の日本の芸能界が忘れてしまった生粋のエンタティナーではないでしょうか。
日本の芸能界は江利さんをもっと再評価すべきだと今回強く思いました。
もしみなさんがサザエさんが好きで、さらに昭和日本のコメディアンに興味がおありで、しかもAmazonプライム(日本映画チャンネル?)の視聴が可能ならば、ぜひ一度、実写版「サザエさん」を見ることをおすすめします。
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