テレビ・ラジオを放送する側と視聴者との絶妙な距離を学んだラジオ放送局時代

2020年7月19日日曜日

TVディレクターの仕事

t f B! P L
お早うございます。早起きディレクターです。
もう40年近い昔の話ですが、僕は大学生時代に大阪・梅田の桜橋という場所にあったラジオ大阪という放送局で1年ほどアルバイトをしていたことがあります。
ほとんどん人が知らない(覚えていない)とは思いますが、
「お元気ですか?ラジオ大阪です」
という歌謡曲とおしゃべりやニュースを軸にした朝の月〜金曜日の帯ワイド番組3時間だったかな?)です。

司会はかつて「ファンキープリンス」という昔関西で有名だったグループサウンズ出身の水谷ひろしさんと福田まゆみさんという若いきれいなタレントさんお二人がメインパーソナリティーをつとめていました。



とにかく貧乏だったけど夢だけはあった大学留年時代


その頃ぼくは西宮の阪神電車駅そばにある古いアパートで大学5年目の寂しい春を迎えていました。
つまり留年していたわけです。
でも、留年とはいえそれは単に単位取得の問題だけでなく、就職の問題が絡んでいました。
というのもその頃、僕はラジオ局で働きたかったのですが、あいにく新人を募集する放送局がなかったのです。
そこでもう一年学生生活を送りながら狭きラジオ局の門が開くのを待つことにしたのです。
(しかし残念ながら翌年ラジオ局とは縁がなく、結局ぼくはテレビの制作会社に潜り込んだわけです)

さて、学生生活を追加で1年間延期するのですから当然、学費や生活費その他でお金が必要になります。
そこで知人の紹介でラジオ大阪のアルバイト(つまり皿回し)の職を得ることができたわけですが、もちろん給料は安いものです。
当時は一日7,8時間働いて月に8万円ちょっとだったでしょうか。

厳しいけどなぜかラジオ局は温かい。ラジオリスナーとの親密性。


毎朝5時に起きては最寄りの香櫨園駅までダッシュで電車に飛び乗る。
30分ほどうとうとと車内で揺られて6時前には桜橋サンケイビル2階にあった「ラジオ大阪」に到着するやいなや、当日放送するレコードを準備したりはがきを整理したりしてバタバタと働いて7時過ぎからの本番に備えます。
いまでこそ歳を取って「早起きディレクター」と名乗っていますが、若い頃の朝5時起きはつらかったものです。





そして放送が始まれば、次にかけるレコードをセットしながらラジオ局にかかってくるリスナーからの電話の相手です。
リスナーは圧倒的におばちゃんが多かった。

彼女たちのリクエスト曲や日々のエピソードなどを聞いたりしながら、時には母親くらいの年齢の人から愚痴や悩みを打ち明けられることもありました。
また目の見えない方や体の不自由な方からもよく相談をうけました。
「僕みたいな若造がこんな大切な話を聞いてよいのだろうか?」と疑問に思いながらも、リスナーさんたちとの妙に親密な距離感がなんだか心地よかったことを覚えています。

その時に体験したことはその後にテレビの仕事をするようになってからも、とても大きい影響をもらいました。
何より自分が見ず知らない女性たちと親しげに、時に甘えたりしながら会話できることが不思議で嬉しくもありました。




テレビの距離感、ラジオの距離感、ネットメールの距離感


前述したように卒業後はラジオの世界から方針転換してテレビの世界で働くようになったんですが、テレビの放送局で働きながら一番感じたのはテレビ業界における人間同士の距離感の遠さでした。
ラジオとテレビのスタジオでの違いを僕なりに表現するとそれは「親密度の違い」です。
そのことはテレビ業界で働きだしてからいつも悩んでいました。
そして色んな体験を通して自分なりの結論を得ました。
というのも、ラジオは出演者がマイクの前に座れば放送ははじまりますがテレビはそうはいきません。
テレビは出演者の立ち位置、その動作、時にメイクや衣装によって照明やマイク、カメラの位置を調整しなければなりません。
つまり関わる人間が多すぎるのです。
そしてそのためにいつも犠牲になるのが色んな役割の人間たちの「親密度」です。


その後、外に飛び出すロケものが好きになったのもその「親密性」からです。
ロケモノはスタジオ撮影に比べて撮影人数が少ない(5,6人)ですから。
だから気候ものなどのロケに出ると、テレビと言えどもスタッフと出演者も途端に家族的になるから不思議です。
それは今、担当している「とびだせ!えほん」も同様です。
(もちろん残念ながら、スタッフの相性的な意味から親密にはならない場合もあります)


ハガキに代わるメールでの親密性


最近はコロナの影響で視聴者からのメールをもとに「家で絵を描く企画」を何度か続けていますが、これは絵本作家の長谷川義史さんもかなり気に入っているようです。
ある日、収録の最中に長谷川さんがポツンと「これって昔、聴いていたラジオ番組みたいやな」とつぶやいたのが僕にはとても印象的でした。

最近はテレビ出身のアナウンサーでもラジオ番組をしたいがために転身するかたもいらっしゃいます。
関西テレビを退社して、毎日放送のちちんぷいぷいを担当された山本アナウンサーもそうだと聞いています。
山本さんはぷいぷい以外にも毎日放送のラジオ番組を担当しています。
やっぱり、人間って ”打てば響く親密な距離間” の中で自分を表現したいのでしょうか。


ちなみに聴いた話では長谷川義史さんも子ども時代は、每日母親がミシン仕事の合間に流していたラジオ番組を聞きながら育ったそうです。
「バンザイ歌謡曲」「歌って笑ってドンドコドン」トールコーランさんの「悩みの相談室」
たぶんラジオが聞こえるその家庭には親密な親子の時間、空気が流れていたのでしょう。
ちなみに長谷川さんのおかあちゃんのお気に入りはやっぱり「ラジオ大阪」だったそうです。







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大阪市, 大阪府, Japan
関西在住。早起きのベテランTVディレクターです。これまで旅モノやドキュメンタリーを中心に活動。MBS「ちちんぷいぷい」の旅コーナー”『とびだせ!えほん』『前略、旅先にて』やKTV「ふるさとZIP探偵団」などを担当していました。 テレビ業界での経験話からドラマや音楽論。そして趣味の占星術まで色んなジャンルの話題をつづっています。

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