皆さんは「男はつらいよ」という映画はお好きでしょうか? 今の若い子たちにはもう馴染みがないかもしれませんが、僕らくらいの年代(60歳以上)の方なら、今でもファンはかなりいらっしゃるんじゃないでしょうか。
かくいう私も、今やテレビといえば毎週土曜日にBSテレ東で放送する「男はつらいよ」シリーズしか見ないくらいの大ファンです。
とはいえ、その良さがわかってきたのは人生の後半を迎える頃から。若い頃は正直、「日本人が好むベタな人情喜劇」くらいにしか思っていませんでした。
シンプルな構成だからこそ光る、山田演出の妙
だって物語はたいていワンパターンです。風来坊の主人公が故郷に帰ってきて、家族と揉めて、美女に惚れて、振られて、いじけて去っていく。最後は盆か正月の遠い田舎の町の空の下。
寅さんのことをそんなふうにしか見られなかった僕も、きっと若かったんですね。今では画面に向かって毎回のように反省させられます。同じパターンでありながら、微妙に練られた監督の演出や、各役者さんの名演技には頭が下がる思いです。
とくに、カット毎の画角サイズ、被写界深度(ピントの深さ)、そして照明の使いよう。後年、旅ディレクターになってからは、山田監督の見事なロングショットの使い方は、僕なりにかなり勉強させていただきました。
全国のロケ地巡りは、旅ディレクターの特権
まあ、そんな堅い映像論はおいといて……やっぱり寅さんといえば、旅ディレクターとしては「毎回のロケ地」が気になって仕方がありません。ありがたいことに仕事柄、自分がロケで訪れた場所が、かつて「男はつらいよ」の撮影地だったということが何度もあります。
- 大阪の通天閣、芦屋雁之助さんと分かれた地下鉄の入口
- 宮津・伊根の舟屋 「とびだせ!えほん」で画伯も大興奮
- 奈良の斑鳩、 秋のコスモスがもえていた
- 鹿児島の霧島、 菜の花が美しかった
- 青森の弘前、 駅前の寿司や食べたホヤが美味かった
- 兵庫のたつの、 赤とんぼ、紅葉がまっかっかだった
- 大分の国東、 坂道の町、石窟の石仏群が懐かしい
- 島根の太田 不思議な屋根瓦の町並み
- ……もう数え上げればきりがありませんが、そんな撮影現場ではいつも撮影の合間を縫って、記念撮影をしたもんです。
下の写真は、京都の五条坂にある「河井寛次郎記念館」でのもの。 寅さんが人間国宝の陶芸家・加納作次郎と酒を飲んで一泊し、翌朝目を覚ます、あの印象的なシーンの場所です。
自分も寅さんを気取って、思わずハイポーズ。
あの時のヒロインは、いしだあゆみさんでしたねえ。
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寅さんを気取って
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念願かなって訪れた、岡山県高梁市の酒屋さん
さて、そんな寅さん好きな僕ですが、かねてから「どうしても行きたくて、でも機会がなかった場所」が一つだけありました。
それが、今回訪ねた岡山県高梁市です。
寅さんの義理の弟・博の故郷であることは、ファンならご存知のはず。そこには、名優・志村喬さんが演じる諏訪飈一郎(ひょういちろう)が住む、立派な白壁の家があります(もちろん撮影用の架空の家ですが)。
博の故郷での葬儀に出席した寅さんが、成り行きで志村喬さんの家に寝泊まりすることになり、ある日二人でお酒を買いに出かける——あの酒屋さんのシーンが、僕はたまらなく好きで、ずっと訪れたかったのです。
今回、ようやく念願かなって高梁市を訪れ、その場所に立ったとき……いやあ、本当に感激しました。年甲斐もなく、思わずはしゃいでしまいましたよ。
そんな、大人のロマンとノスタルジーが詰まった旅の様子を、今回は18分ほどの動画にまとめました。ぜひ、画面を通してあの空気感を味わってみてください。





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