ナレーションの極意。元MBS小池清氏に学んだ、映像を「生かす」ための声音の美学

2020年3月4日水曜日

TVディレクターの仕事 前略旅先にて

t f B! P L
おはようございます。早起きディレクターです。

「今のYouTubeやVTRは、言葉で埋め尽くされすぎていないか。 かつて毎日放送に、独特の音声で映像に命を吹き込む伝説のアナウンサーがいました。

小池清さん。

 20年以上のキャリアを持つ私にとって、彼は単なるナレーターではなく、映像表現の『師』でした。小池さんから学んだ、プロのナレーションの本質を振り返ります。



クラリネットのような声の響き


大阪市北区南森町駅から天神橋商店街を500メートルほど歩いた川沿いの場所にテレビのナレーションを収録するスタジオがある。
小池さんは月に1度、佐川満男さんの「前略、旅先にて」(毎日放送ちちぷいの旅コーナー)の語り手として箕面にある自宅からここにやってられた。

駅からスタジオまではおよそ5分ほどの距離だ。
しかし小池さんは20分近くかけてゆっくり歩かれる。
「タクシーを使って下さい」と何度お願いしても「商店街を歩くのが楽しみだから」と、頑として譲らなかった。
そして必ず約束した時間の10分前には颯爽とスタジオに登場された。

黒や茶色を基本にしたお洒落な皮コートとベレー帽。
長身で背筋をピンと伸ばした姿。
たまに30分近く早く来られることもあったが、そういう時は

「いやあ、早く来過ぎちゃったかな?」

と丸くて優しい声でにっこり微笑まれた。


春なのに天候不順が続いたある雨の日、一度体調を崩された。
スタジオのソファーから立ち上がるのさえ辛そうだったが、この日も送迎の申し出を固辞され商店街を歩いて帰られた。雨の中、傘をさしてゆっくり去っていく後ろ姿が忘れられない。
最後の録音はコーナーが最終回を迎える2011年の9月だった。打ち上げの酒席ではじめて若い頃の話を聞かせて頂いた。

実は小池さんはもともと自分の声があまり好きではなかったのだという。
しかしある録音技師さんの一言がきっかけで自信を持てた。

 「小池君の声はまるで木管楽器のようだね」

丸みがあって深みがあって上品な小池さんの声はたしかに木管楽器だ。
例えば良質のクラリネットのような心地よく響く音。
きっと今頃、空の上で「いやあ、早く来過ぎちゃったかな?」と、丸く優しい声で
にっこり微笑んでおられるのだろう。

(一部加筆、修正しました)





小池清さん…もと毎日放送のアナウンサー
      名番組「アップダウンクイズ」の司会で全国的に知られる
      2000年にフリーアナウンサーに転身
      「前略、旅先にて」などのナレーションを担当
      2012年4月28日 80歳で逝去











【早起き元TVディレクターが贈る】散歩ときどき神社旅、ドキドキ占星術

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大阪市, 大阪府, Japan
元テレビ番組ディレクター。長年、映像制作の最前線で「伝えること」に心血を注いできました。 現在は、朝の澄んだ空気の中で行う「早起き散歩」と、各地の歴史に触れる「神社巡り」をライフワークにしています。現役時代に培った映像制作のノウハウを詰め込み、YouTubeでは「大人の本気の趣味」としての動画を配信中。 このブログでは、動画では語りきれなかった撮影機材の裏話、旅の細かな記録、そしてディレクター視点での「日常の切り取り方」を綴っています。 映像と文章を通じて、皆さんの日常が少しだけ豊かになるような「朝のひととき」をお届けできれば幸いです。 ▷ YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@HayaokiTVDirector ▷ お仕事・お問い合わせ:junyo1123@gmai.com

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